*Schwelle*-彼方にいる人々へ-二宮知子展より
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はじめに水音がする
霧の触手が妄想の海にとどく
ひと呼吸ごとに世界は反転する
春の宵 たどりてふかし 霧の胸
なにも支えない柱
鏡の地平線
境界ということ 或いは
その天体 林檎の宇宙 囓っている
落下するひとつの声
影の水 光の水
夜、氷山の音がする
空気のみえない触手がわたしの殻を融かす
彼方にいる人々へ
ひたすらにみつめることの
光の重さについて考えている
それでもかまわないとわたしはおもっている