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Method of shaping handmade-polyhedronsexperiences of arttherapy… 2001,summer/Tomoko NINOMIYA
手の平でつくる多面体…アートセラピー体験記… 2001年夏 /二宮知子

*There is a method of art therapy;
shaping clay into various polyhedrons
by only our palms and fingers.
In 2001,Tomoko was instructed the rare method
by Yoko KATO;art therapist studied in Germany,
and applied it to make the prototype of
"TTT-Nearly Dodecahedron".




いままでTTTは6面体(直方体や立方体)が多かったので、主にガラス板を組み合わせた箱型にロウを
流し込むという方法で作ってきた。
今回、日詰明男氏とのコラボレーションのために、正12面体でつくってみようと思い立ったのだが、
これまでの方法で正12面体の型を作るというのは大雑把な人間にはほとんど不可能な技だろう。
五角形の板ガラスを12枚.....切り出すときの誤差を想像しただけで気が遠くなってくる。

ふと、以前すこしだけ教わったことのある、*加藤庸子先生の方法を思い出した。

*加藤庸子:アートセラピスト
オーストリアおよびドイツでシュタイナー思想と
芸術療法を学び、帰国。精神障害者社会復帰施設で
絵画・陶芸等を通した芸術療法をおこなっている。


自分自身の両手だけで、いろいろな多面体をつくる方法だったということは憶えている.....ひとつのアートセラピー。
つつみこむような仕草のこと....。
そんなふうにできあがった立体は、板ガラスでつくるものとは違い、「人の手」というものの、
なんらかの意味をも含んだものでもあるはず.....
どんな意味かはわからない.....でも、板作りの多面体よりはわたしに向いているだろう...
そんな漠然とした思いで加藤先生に連絡をとってみた。
長いあいだご無沙汰していたにもかかわらず、アートセラピーのクラスに参加させていただくことになった。

暑い夏の日、
正4面体/正6面体/正8面体/正12面体/正20面体/菱形12面体/菱形20面体、それらの相貫体など、
さまざまなシンメトリックな立体をつくることができる、驚くべき方法のうちのほんのいくつかを体験できた。

粘土でもやはり、正12面体を作るのは簡単なことではなかった。

すべての基本として、まず、胸のまえで球をつくる。なるべく手もとを見ないで。
目を閉じたりしながら。
それは自分の手の平と土の境界を、精密に、たしかめ続ける作業と思えた。
それから正8面体をつくる。なぜか正20面体もつくる。
1日目の午前中はそれでおわった。こんなに素直な気持ちでになにかにとりくむのは久しぶりだ。
午後、 いよいよ正12面体。
「......こんなふうに、ぎゅっぎゅっ....ほら...ね?」先生の仕草も表情も穏やかで日常的なのだが、
両手の中で、やわらかな稜線の12面体がだんだんと姿を現わす現象は日常生活ではあまりみられない。

それにしても、わたしの手の中の土の塊はいつまでたっても不定形だ......。
.......夕方、重たく湿った粘土の塊は、微かに正12面体の面影を宿しはじめているように見えた。

2日目。
みなさん、暑さでグッタリ気味。クーラーもあまりきかない。
「ボランティア」という立場で参加させていただいているのに、自分のことばかりで忙しい自分に
自分でもあきれるのだが、どうしても今日中に修得しなければならない。
昨日のことを思い出しながら、また球から始める。
時々目を閉じて、胸の正面で手を組んでいると、神妙なきもち。
正12面体らしき面影を宿してからは、道がひとりでにできるような感じ。
教わったように同じ動作を繰り返していると、いつのまにか対称性を帯びた形が出現する。
これはめずらしい形の「おむすび」を作る仕草だ…。
ついに、人間の2つの手は、土で正12面体を作るためにあったのだと思えてくる。
危険な思想かもしれないが。
手の平だけで、それほど絶妙な角度(面と面の角度)を作れるのである。
球形の粘土から正12面体を削り出せる人がどれほどいるかはわからないが、
少なくともわたしは、できそうにもない。
―ほどよく甘いエッジ:対称性のある整った全体の形―という不思議な対照。

いったいどのような人が考えだしたのだろう.....

加藤先生に少しだけお話を伺うことができた。
創始者は人智学者でもあるフッティヒ先生。(加藤先生はドイツで直接教わったとのこと)
それぞれの形には意味があり、いつでもだれでもどれでもつくってよいというわけではないらしいこと。
正8面体と正12面体は安全(?)なので、気が向けば毎日でもつくってよいとのこと。

自分勝手な目的のために大急ぎで習ったので、その奥義には到達できるはずもないが、
正12面体をつくる作業は「感受性をそうあるべきレベルに整えてくれる」と感じた。
(なにごとかを感じる度合は、鋭敏すぎても、怠惰すぎても社会に適応するのが困難なものだ...)

プラトンの立体のひとつでもある正12面体は、エーテルを意味するという。

正気を保っているのが難しく感じる、暑い午後。
ひんやりとした土の感触。 わたくしサイズの唯一の「約正12面体」ができあがった。
(セラピー効果のおまけつきで)
山奥の仕事場に帰ってからも、しばらく庭で練習した。
この手づくり12面体を原型にして抜き型を造り、土をロウに置き換えれば、「約正12面体TTT」 が作れそうである。

............................... 加藤庸子先生どうもありがとうございました。

Translucent
Tranquilizer by
Tomoko
-Nearly Dodecahedron

material:wax,LED/height:about 10cm

technical support : Touji Tsukagoshi
photo by Touji Tsukagoshi

* Special thanks *
1998年よりTTT点滅回路を設計・制作してくださっている塚越藤司氏、
Wax版「約正12面体」の石膏型作りに技術と知恵と手を貸してくださった
松本先生、 日詰氏にも心より感謝いたします。

July,2001
二宮知子