光の増減は自然対数曲線に従っておこなわれています。
自然対数曲線は、エクスポネンシャル・カーヴとも呼ばれていて、
自然界の物理現象を書き表すのにとても便利な曲線です。
たとえば、一定の速度で流れている水路の中に、そっと置かれた
金属球が徐々に速度を上げ、やがて水流に追いついてゆく様子や、
密閉容器の中に閉じこめられていた空気が抜けてゆくときの、圧力
の下がり方などを想像していただくとよいでしょう。
自然対数曲線で駆動される"Tranquilizer"の光が、ちょうど私た
ちの体感とよく合った感じがするのは、私たちの体の中でもまた、
自然対数曲線で書き表すことができるような物理現象が、数多く起
きているからではないでしょうか。
その周期
光の増減のリズムは、人の正常呼吸の、約1/3から1/4と長い
周期になっています。これはTranquilizer(鎮静剤)という名が
示すように、神経の鎮静効果を期待しているためです。
また、このリズムを作り出すのには、アナログ的な手法が用いら
れています。
高価であることや正確さに欠けることで、今では忘れられた感の
あるアナログ回路なのですが、温度や湿度や電源の状態などに影響
されて微妙に変化するアナログのリズムは、静謐でありながら、ど
こか曖昧のある二宮知子の作品にふさわしいと思い、あえて採用し
ました。
■つかごし とうじ(エンジニア)■