※This page Japanese only.※cf.Artist's Note by Tomoko Ninimiya
1996年 "TRANSLUCENT TRANQUILIZER " というタイトルは、糸と半透明の布でできた、中心に一人分の椅子のある、中にはいれるインスタレ−ションのために、初めて使われた。
文字どおり、半透明の精神安定剤という効果を期待してつくられた装置。この円形プランのギャラリーの中心部分の高い吹き抜けを見上げると天窓がある。その天窓を囲むように白く長い紗幕を吊るし、円筒形の蚊帳状の空間を作った。中の椅子に腰掛けた人は、足元の水盤に、天井からの点(天)滴装置からの水がときたま落下し、かすかな水音をたてるのを聞く、または見る。遮断されているのでもなく、露出しているわけでもない「半分外で半分内」のひとりの空間。昼間、中にいる人を撮影すると、いろいろな方向からの光の乱反射で(つまりは撮影用のいわゆるレフ板に取り囲まれて坐っているようなもの)実際よりも美しく写る、という予想外の効果もあった。 ◇1996,"TRANSLUCENT TRANQUILIZER#1" photo by Akihiko Iimura ◇ギャラリーブロッケン/東京 |
以来、半透明の物質と光は、より直接的に作品のなかで意識されるようになり、素材も形態も規模も変遷しているが、「半透明のもの」「中途半端なもの」「曖昧なもの」への愛慕をテーマにした連続した試み、という意味で、各展覧会のタイトルとして用いている。
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ロウを画材のひとつとして使い始めたのは1996年頃。はじめは、油彩の表面にミツロウ(蜜蝋)を塗り重ねたり、木の枠を付けた支持体にパラフィンロウを流し込んだり、というような平面を制作していたが、あるとき、光を透してこの絵を見たいと思った。
画布のかわりに極薄い和紙(美濃紙)を木枠に張り、ロウを塗布し、油絵の具などで描き、窓辺に置いた。ロウの厚さの具合で明度が微妙に変化し、うつくしかったが、日光があたると、絵は溶けた。
1997年、暗室にしたギャラリーの床と壁にそれらの箱を配置した。 ◇1997.March, "MOON COLOURED SHAPES=月色を帯びたものたち" photo by Akihiko Iimura ◇ギャラリー無寸草/東京 ◇1997.September, "TRANSLUCENT TRANQUILIZER#2" photo by Kanna Funakoshi◇ベルリン自由大学/Berlin,GERMANY ◇1998.January, "ECLECTIC ELECTRIC" photo by T. Ninomiya ◇CORTLAND JESSUP GALLERY/New York City,USA 全体は一つのインスタレーションとして構成されたが、同時にひとつひとつが光の絵として独立している、と看做したかった。 |
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1998年夏の終り、冷たい光LED(発光ダイオード)を使い始めた。光源により蝋が溶ける、という心配から開放され、ロウを膜ではなく、「かたまり」で扱えるようになった。
「枠」からの解放 ........ ........ ....... .... .... ... .. ... ... ... .. .. ... . . . . . ◇1998.November,"TRANSLUCENT TRANQUILIZER#3" photo by T. Ninomiya ◇ギャルリ・ド・カフェ伝/東京 |
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1998年12月、LED入りパラフィン蝋の塊は、エンジニア塚越藤司氏の協力でおだやかに呼吸をはじめた。
◇1999.March, "ミエルモノとミエナイモノのあいだの空" photo by T. Ninomiya ◇Gallery KALO KALO HOUSE/東京 ◇1999.June, "TRANSLUCENT TRANQUILIZER#4" photo by T. Ninomiya ◇ARTS IOWA CITY/Iowa City,USA ◇1999.December, "Four Person's show for Christmas" photo by Touji Tsukagoshi ◇ギャラリー無寸草/東京 ◇2000.March, "Respirationキリノナカノコキュウホウ" photo by T. Ninomiya ◇ギャラリー無寸草 /東京 ◇2000.May, "TRANSLUCENT TRANQUILIZER#5" photo by Touji Tsukagoshi ◇OZCギャラリー/大阪 |
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ひとはたいせつなことほどちいさな声で話す。 |
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